労働基準法改正案の2つの方向性
労働基準法改正案が国会で審議されております。施行期日は2016年4月1日を予定しております(一部は2019年4月1日)。改正の内容は、①長時間労働を抑制する②労働時間ではなく成果等で評価される、が主なポイントです。
①長時間労働を抑制する改正の主たるものは、一定日数の年次有給休暇の取得、②労働時間ではなく成果等で評価する改正の主たるものは、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設と企画業務型裁量労働制の見直しです。長時間労働を抑制することは全労働者共通ですが、労働時間ではなく成果等で評価することは一部労働者にのみ関係すると思われます。労働時間を抑制しつつ、一部労働者について労働時間と賃金を切断することにより、長時間労働をしない労働者と長時間労働をしないで高く評価される労働者とに区分されます。
4・6通達(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」2001年4月6日)を事実上拡大強化するなど、行政官庁による使用者に対する規制を強めていくと思われます。
36協定の特別条項、管理監督者を含むすべての労働者に関する労働時間把握、事業場外労働に限って自己申告を認め事業場内労働は客観的記録(タイムカード、パソコンの起動時刻等)による健康管理時間把握など、使用者に求められる措置など今まで以上に厳しくなると思われます。
労働基準法等の一部を改正する法律案の概要
長時間労働を抑制するとともに、労働者が、その健康を確保しつつ、創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができる環境を整備するため、労働時間制度の見直しを行う等所要の改正を行う。
- 長時間労働抑制案・年次有給休暇取得促進策等
(1) 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する(3年後実施)
(2) 著しい長時間労働に対する助言指導を強化するための規定の新設
時間外労働に係る助言指導に当たり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」旨を明確にする。
(3) 一定日数の年次有給休暇の確実な取得
使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年時季を指定して与えなければならないこととする(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はない)。
(4) 企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進(*労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正)
企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に変えることができることとする。
- 多様で柔軟な働き方の実現
(1) フレックスタイム制の見直し
フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。
(2)企業業務型裁量労働制の見直し
企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加するとともに、対象者の健康確保措置の充実や手続きの簡素化等の見直しを行う。
(3)特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。
文施行期日:平成28年4月1日(ただし、Ⅰの(1)については平成31年4月1日)
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